中国人スタッフ:
陳 瑜(ちゃん ゆ)
夏の終わりの京都では、暮れなずむ鴨川(かもがわ)が風雅な涼を誘います。そんな川景でひときわ目を引くのが、護岸にしつらえた納涼舞台・川床(かわゆか)。今日は念願かなって、憧れの床デビュー♪せっかくの初体験なので、浴衣を着てめいっぱい楽しんじゃいます!
阪急河原町駅の改札を抜け、木屋町通(きやまちどおり)へ。通りの東側には京町家風の店舗が軒を連ね、西側を流れる小川が夏の日差しを受けてキラキラと輝いています。青々とした枝垂れ柳が、石畳の歩道にまだらな木陰をつくるさまは涼感たっぷり。ここが都会の真ん中であることを忘れてしまいそうです。ちなみに、この小川は高瀬川(たかせがわ)といい、今から約400年前の江戸時代初期に開削され、資材を運ぶ水路として大正9年(1920年)まで活躍したとか。古の京都に思いを馳せながら、橋のたもとで記念撮影をパチリ。さて、そろそろ予約した川床のお店に行くとしますか。このまま木屋町通をまっすぐ南下します。
香港出身の私にとって京都の蒸し暑さは、まだまだかわいいものです。
亜熱帯気候の香港は、日本以上に高温多湿。夏には湿度が90%を超えることもあります。
逆に冬は寒くないので快適ですが、そのぶん季節感がありません。
日本は春夏秋冬がはっきりしていて、いいですね。私は日本の四季が大好きです♪
高層ビルが林立する香港では、自然の風景を眺める機会はほとんどありません。日本の川床のように、河川にせり出した舞台で川風と川音を感じながら料理を楽しむなんて、すごく優雅で贅沢なことだと思います。あー、早く食べたいな。そうそう、今から行くお店は、京町家を改装して2012年4月にオープンしたばかりのカフェなんです。リエットやタルティーヌ、それにフランスビールが味わえ、スタッフにはフランス人の方もいらっしゃるとか。まさに日本とフランスのクロスカルチャーですね。川床は、約400年の歴史を誇る日本の文化。伝統の世界は、ともすれば排他的になりがちですが、こうして外国の食文化を上手に取り入れ、新しいカルチャーとして発信していくのは、すばらしいことですね!
住所:京都市下京区美濃屋町176-1
電話:075-341-0115
営業時間:11:00-23:00(LO)
※金・土 -24:00
定休日:年中無休
※川床の利用には別途チャージが必要(一人500円)
香港の母国語は広東語ですが、ビジネスシーンの公用語は英語です。
街にはフィリピン人、インドネシア人、アメリカ人、イギリス人など多くの外国人がいて、テレビをつけると香港生まれのインド人レポーターが、流暢な広東語で話していることも。
また、小学校では英語とともに、中国大陸で使われる北京語も学びます。
17時の川床はまだ明るく、ジージーというアブラゼミの鳴き声が響いています。鴨川を眼下に望み、遠くに山々の大パノラマが広がる。こんな素敵な場所で夕食をいただけるなんて、感激です♪私はメインディッシュに「丹波若鶏もも肉のコンフィ」を選びました。丹波産の鶏肉をフランスの調理法でアレンジする点がクロスカルチャーで、いいですね!肉厚のお肉はとっても柔らかく、口の中にジュワーと旨みが広がります。おいしい料理とやさしい川風が心地よく、すっかり長居してしまいました。店を出て河川敷に下りると、川の流れる音がさっきより大きく聞こえます。ヒグラシの「カナカナカナ…」と鳴く声が耳に染み入り、心が癒されるようでした。
中国には川床の文化がありません。日本のように川のそばで営業する飲食店が多くないからでしょうね。でも、かつて漁村だった香港には、船に乗って海鮮を食べる風習が今でも残っています。海風に吹かれて楽しむ食事はとても気持ち良く、夏場は大人気なんですよ。
日本に住んで7年、京都で川床を見るたびに「一度行ってみたいな」と思っていました。この夏にやっと体験することができて、本当に嬉しいです。中国人の私が浴衣を着て、歴史ある川床でフランス料理を食べるなんて、とてもグローバルですよね。この川床のクロスカルチャーを、より多くの外国人の方に味わってほしいと思います。
陳 瑜(ちゃん ゆ)
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