韓国人スタッフ:
河 知延(は じよん)
中学3年生のときに友人と福岡へ遊びに来て以来、すっかり日本好きになった私。
お店情報にも詳しくなり、「シンプルな黒の茶碗はA店、柄物のかわいいお皿はB店ね」と行きつけを増やしつつ、日本暮らしを楽しんでいます。そんな私が、今日は清水焼の本場で陶芸にチャレンジ。どんな器ができるか、すっごく楽しみです♪
敷地内の通路脇に、日常使いの手頃な食器がたくさん!(小鉢315円~)
秋の東山は平日というのに、どこを見ても人、人、人! 修学旅行の学生や外国人観光客であふれ、漬物や生八ツ橋をおいしそうに試食しています。人の流れに従いながら坂を上ると、あ、お目当ての場所が見えてきました。こちらは明治3年創業の清水焼の老舗。広い敷地の中に陶芸店や体験工房のほか、飲食店や喫茶店など8つの店舗を有します。和瓦を配した高麗門(こうらいもん)に、年季の入った石灯篭(いしどうろう)、赤色まぶしい野点傘(のだてがさ)に、毛氈(もうせん)をまとった長椅子まであり、まるで日本庭園そのもの。和の雰囲気の中、ここはひとつ、和食でもいただきますか。陶芸体験前の腹ごしらえに選んだのは、敷地内のお食事処。これまた情緒たっぷりで、南西向きの窓からは京都タワーが望めます。眺望を楽しみながらいただく穴子の天ぷらはふっくら柔らかくて、ほんのり甘く、う~ん、おいしい!
日本の料理は素材の味を大切にするからか、全般的に薄味ですね。また盛り付けがキレイで、見た目にお上品。対して、韓国の料理はタレに重点をおいた、濃くて辛い味付けが主流。量が多く大胆な盛り付けの主菜に、キムチやナムルなどの小鉢が何皿も付くので食べ応え満点です。
お食事処を出て石の階段を下り、いよいよ工房へ。エプロン姿の男性が、私たちを出迎えてくれました。気さくなこの方は本日のインストラクター、真鍋元気先生です。こちらの工房は、ドラマに出てくるような山奥の窯元とは違い、広くて日当たりも良く開放的なイメージ。ふと奥のテーブルを見ると、焼成を終えた完成品がたくさん並んでいます。「私の作品もこうやって、1カ月後に配送されるんだなあ」と何気なく眺めていると、明らかにレベルの違う陶器を発見。目の覚めるような青、美しい曲線。横に添えられたリーフレットには作者の受賞歴や個展の開催歴が書かれてあり、それが真鍋先生だと気付きました。さすがは清水焼の本場。初心者が、こんなすごい先生に手ほどきしてもらえるなんて感激!
鮮やかな青がまぶしい先生の作品
「日本のいいところは何?」と聞かれたら、私は間違いなく「接客サービス!」と答えます。
美容室では髪質をチェックしてくれるし、ブティックでは付かず離れずのいい距離感で接してくれるし、
飲食店では何度もお茶を入れに来てくれます。日本のお店のスタッフは、皆さん本当に気配り上手ですね。
エプロンをつけ、いよいよスタート。まずは先生が下準備をしてくれます。揉んだ陶土をろくろにセットし成形したら、さあ、ここからが私の出番 です。ろくろの前に座ると、かの恋愛映画のヒロインになった気分。土を触ると、あれれ?どろどろしているのかと思いきや、なんだかお餅みたいです。手触りがモチモチで気持ちい~♪ろくろを回しながら手で穴をあけ、薄くのばして形を整えます。一瞬の手の動きに反応して、形がぐいっと変化する。なんだか土が生きているようで、不思議な感動を覚えました。口の縁に鹿の皮をあててなめらかに仕上げたら、細いひもで切り離します。やったぁ、完成!! 焼き上がりの色を選んだ後、先生に頼んで名前を彫らせてもらいました。世界に一つのマイ食器、大切に使います。
深みのある大皿に名前を刻む
15、6点の見本から色を選びます。
私は渋めが好きなので黒と茶のツートンを選択
日本に来て戸惑ったのが、若い女性の「かわい~!」という反応です。韓国人は基本的にお世辞を言いません。でも日本人は、たとえ自分がそう思わなくても、相手に合わせるために「かわいい」を連発しますよね。とはいえ、かくいう私も日本に住んで、だいぶ褒め上手になりました。たまに韓国の友人に会うと、「どうしたん?」と驚かれます(笑)。
「近くて遠い国」と言われる日本と韓国。私自身、日本に来て1年半になりますが、距離はすごく近いのに、習慣や文化、食生活などで大きな違いを実感しています。今日は、日本のカルチャーが強く根付く京都でさらなる異文化を体感でき、本当に楽しい一日となりました。違いを認め、受け入れることで、自分自身も成長できる。この私の気持ちを、たくさんの方々と分かち合うことができればいいと思います。
河 知延(は じよん)
寺院・神社、店舗、施設等に関しては、掲載の各スポットへ直接お問い合わせください。