
盆地特有の蒸し暑さに包まれる京の夏。人々の熱気がこもる中心部から少し離れ、洛北・鷹ヶ峰の納涼スポットを訪れます。
大宮駅よりバスに揺られること約30分。最初に向かったのは、鷹ヶ峰にある曹洞宗の寺院・源光庵。山門をくぐると、苔むす庭園が広がり、一気に暑さが和らぎます。こちらの見どころは、何といっても本堂の「迷いの窓」と「悟りの窓」。禅の精神を形で表したものとされ、四角の窓が人間の生涯を、丸い窓が宇宙を表現しているといわれています。さっそく本堂に上がって窓の前へ。じっと窓越しに木々の瑞々しい緑を眺めていると、不思議と気持ちが落ち着いてきます。参拝者が集中する秋に比べ、人の出入りが少ないこともあり、ゆっくりと癒しの時にひたることができました。本堂を後にする前にふと天井を見上げると、くっきりと残る足跡が!もともとは伏見桃山城の床板だったもので、落城時に亡くなった武士を弔うために血の跡をそのままに源光庵に奉納されたといいます。この血天井のほかにも、本堂裏に北山を借景とする枯山水庭園もあり、こぢんまりとしたお寺ながらもついつい長居してしまう魅力にあふれていました。
韓国の宮殿では、改築時にもともとの建材を再利用していたことは広く知られています。しかし、源光庵のように亡くなった方の魂の冥福を祈るという目的のもと、建物のパーツが再利用されたという例はなく、日本ならではの考えに驚きました。
住所:京都市北区衣笠鏡石町47
電話:075-491-5101
時間:庭園9:00~17:00、渓涼床(4月末~9月末)昼11:30~15:00(二部制)、夜17:00~21:30(L.O.19:45)
料金:庭園入園料500円
休日:無休
源光庵から、来た道を戻ってしょうざんリゾート京都をめざします。こちらは、北庭と南庭から成る日本庭園をはじめ、料亭やカフェ、結婚式場、レジャー施設などを展開。3万5000坪もの広大な敷地内には一級河川の紙屋川が流れ込み、豊臣秀吉によって造られた「御土居」の史跡も残ります。石畳の道を進み、まずは贅の極みともいうべき北庭へ。太い幹から複数の細い幹が伸びる北山台杉と、大きな紀州青石が巧みに配置される庭園は、歩いて観賞するスタイル。庭の向こうには鷹ヶ峰の山々も見え、何とも雄大。順路に沿って進んでいくと、どこからか鳥の鳴き声が聞こえ、市内にいるのにまるで森林の中にいるかのよう。木々が生み出す木陰やさらさらと流れる小川が、涼やかな風情を生み出し、心地良い散策を楽しめました。
石を川に見立てるなど日本独自のルールに基づき、緻密に計算して自然の景観を再現される日本庭園。一方、韓国の庭園は、自然のあるがままの景観が楽しめるよう、なるべく人の手を加えないように造られます。自然を重視する様式は日本も韓国の庭園も同じですが、その造り方は大きく異なります。
お腹が空いたところで、しょうざんリゾート京都の夏の名物・渓涼床へ。「床」が始まったのは2000年と歴史は浅いものの、市内の納涼床と比べていち早くスタートするうえ、期間中ずっとランチを楽しめるのが魅力です。川面から高さがあるから見晴らしもよく、屋根が付いているから多少の雨なら対応できるところもうれしいポイント。ランチは3種類用意されており、その中から先付、前菜、造り、焚合せ、焼物、椀物などに肉料理がつく「涼風三昧」をいただきました。その時々の食材を使った先付や、鰊(ニシン)ナスにトマトを合わせた焚合せに加え、丁寧に骨切りされたハモや、柔らかな鮎の塩焼きなど、夏の味覚が盛りだくさん。川のせせらぎや水しぶきを感じられるロケーションとあいまって、京都の夏の情緒をより感じられるランチタイムでした。
韓国郊外の川や谷の近くには、京都の川床のように川の上に席を設ける飲食店があり、鶏肉のお粥などのスタミナ食を味わうことができます。営業期間は春~秋と長く、多くの人がドライブを兼ねて出かけることが多いようです。
静かな寺院で落ち着いて瞑想ができたり、夏の風物詩の川床で会席料理を味わえたりと、何とも贅沢な1日!日々の疲れが吹き飛びました。
金 仁子