
京都の西の観光地・嵐山ではさまざまな体験を楽しめます。今回は、滋味に富んだ精進料理で体を労り、心落ち着くお香でリフレッシュできるスポットをめぐります。
嵐山駅から渡月橋を渡り、嵐山観光のメインエリアへ。天龍寺の山門をくぐり、境内の庭園内にある精進料理店・天龍寺篩月(てんりゅうじしげつ)に向かいます。こちらは、天龍寺を開創した夢窓国師の650回忌の記念事業で建てられたもの。もともと賓客(ひんきゃく)をもてなすために提供していた精進料理を、一般の参拝者も味わえるようにしたのだそう。青い畳が清々しい室内で、窓から庭を眺めながら一汁五菜の精進料理をいただきます。精進料理の代表格・ごま豆腐をはじめ、京都らしい生麩団子や賀茂なすの田楽など、メニューはバラエティー豊か。動物性食材や、香辛料など刺激の強いものは使わず、昆布やシイタケ、煎り大豆などでとったやさしい出汁の味が、体にじんわりと染み渡ります。禅宗では食べることも修行の一つであるため、注意しないといけない作法がたくさん。お皿の持ち方や食べるときの姿勢、最後まで食べきるためにたくあんで器をぬぐうなど…。お寺の人に教えてもらいながら食べると、身も心も引き締まるようでした。
韓国にも、料理を提供している寺院はあります。ただし、基本的には貧しい人への施しのため、ナムルなどの簡単な料理とご飯のみとメニューは質素。また、お肉や魚はもちろん、韓国料理の醍醐味である刺激的な食材も使いません。
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺門前 嵐山 昇龍苑内2F
電話:075-212-5590(本社代表)、075-873-5590(体験予約受付)
時間:10:00〜17:00、匂い香りづくり10:10、11:30、13:00、14:30、16:00
料金:匂い香りづくり1296円
休日:無休
天龍寺篩月を後にし、複数のショップが集まる嵐山昇龍苑(あらしやましょうりゅうえん)へ。2階へ上がり、目的の嵐山香郷(らんざんかきょう)へ近づいていくと、店頭で焚かれる上品な香りのお香が鼻をくすぐります。こちらは1705年に創業して以来、京都御所近くに本店を構えるお香の老舗・松栄堂の嵐山店。寺院や料亭、茶席などで使われるお香のほか、現代の生活シーンにも合うアイテムを製造・販売しています。扱う香りの種類は実に多く、さまざまな商品が並ぶ様子に圧倒されるほど!数ある商品の中でも人気があるのは、同店限定のスティックタイプのお香。季節ごとに香りやパッケージが変わるほか、嵐山の四季折々の風景が描かれたお香立とセットになったものも。さまざまな香りを楽しんでから、ここでしかできない香りづくりの体験に挑戦することにしました。
韓国のお香といえば、寺院やお葬式で焚かれるお線香。でも、日本にはお線香のほかにも、スティックタイプで気軽に使えるお香や香りを持ち歩ける匂い袋などもあり、とても新鮮でした。
体験では、オリジナルの香りのしおりと匂い袋をつくります。まずは材料のサンプルを手に取り、どんな香りなのかをチェック。用意されているのは、タブレット状に加工した香りのもと。伝統的な香料の桂皮(けいひ)や丁子(ちょうじ)、藿香(かっこう)・甘松(かんしょう)、竜脳(りゅうのう)に、現代的な香りのラベンダーやスイーツ、さらに季節で変わる香りの7種類。清涼感と甘やかな香りを意識しながら、10個選びました。調合メモに何を組み合わせたか記入したら、香りのもとを粉状になるまで乳棒で砕き、あとは袋に詰めるだけ!小袋に入れて封をしてもらったら、しおり用のぽち袋と匂い袋用の嵐山の四季の風景が描かれた紙の小袋にイン。しおりのほうは小ぶりだから財布や名刺入れに、匂い袋のほうはカバンやタンスなどに入れて使えば、香りを常に感じられます。天然の香料をぜいたくに使いながらも、約30分で簡単に自分好みの香りがつくれるから、何度でも異なる組み合わせを試したくなる体験です。
そもそも韓国には、香りを専門的に扱うお店は多くありません。お線香を買うときは、寺院や仏教用品を扱っているお店で入手するのが一般的。ましてや香りで楽しんだりリラックスしたりといった使い方もしません。
世界遺産の庭にある建物で食べる精進料理や、古くから伝わる香りといった日本の伝統文化にすっかり癒された1日でした。
金 世榮