
朝夕は過ごしやすくなってきたとは言え、日中はまだ残暑が続く季節。緑の木々が生い茂る京都御苑の近くで、涼感あふれる場所を訪ねました。
阪急烏丸駅から地下鉄に乗り換え、京都御苑そばの今出川駅へ。御苑の緑を横目で見ながら歩くこと5分。最初に訪れたのは、創業約500年という歴史を持つ和菓子店「とらや」の喫茶。暖簾をくぐって「虎屋菓寮」の店内に入ると、大きなガラス越しに庭の鮮やかな緑が目に飛び込んできました。庭を臨む席に腰を下ろし、羊羹を代表商品とする「とらや」の餡を堪能できるメニューの一つ「あんみつ」を注文。透明の寒天に加え、季節で変わる色寒天と特製のこし餡、栗羊羹、求肥などがガラスの器に盛られ、なんとも涼やか!まずは餡をそのまま口にすると、小豆の濃厚かつやさしい甘みが口中に広がりました。続いて添えられた黒蜜をかけて食べるとよりコクのある味わいに。美しい庭を眺めながら上品な甘味をいただく贅沢な喫茶タイムに、心からくつろげました。
羊羹はもともと中国の料理で羊の肉を煮込んだスープのこと。鎌倉時代以降に禅宗とともに日本に伝わり、羊肉の代わりに小豆を使った精進料理として広まったそう。現在の中国では日本同様に小豆や栗の甘い羊羹のほか、サンザシや桃、リンゴなどのフルーツ風味の羊羹もあります。
住所:京都市上京区烏丸通今出川下ル観三橘町562-3
電話:075-414-8700
時間:10:00〜19:00
休日:夏季・冬季休暇あり
料金:苔玉作り体験2500円〜※花材により追加料金要。要予約
次に向かったのは、「虎屋菓寮」から徒歩すぐの「花工房」というフラワーショップ。さまざまな植物を販売するかたわら、フラワーアレンジメントやガーデニングの体験教室を行っているとのこと。お店の外観はヨーロッパ風で、店頭にはさまざまな植物の棚や鉢植えが並んでいるので、すぐに見つけることができました。店内に入った途端、芳しい花の香りにうっとり。見渡す限りの植物の緑の葉陰に涼しさを感じました。店内を一周してみると、観葉植物の鉢植え、カラフルな生花のショーケース、ドライフラワーのリース、プリザーブドフラワーのアレンジメントなど、ラインナップの豊富さにびっくり。中でも目に留まったのは多肉植物のアレンジメント!多肉植物は水やりの手間が少なく、小さくてどこでも育てることができるので、中国でも大人気ですが、こちらの多肉植物のアレンジメントは独特な形で、とってもキュートでした。
中国で「花」といえば牡丹(ボタン)で、栽培地は西北部の洛陽が有名です。中国史上唯一の女帝・初唐の則天武后(そくてんぶこう)が牡丹を愛好したことから、当時の首都であった洛陽で多く栽培されたそう。近年、新しく国花を制定する協議を行った際には、牡丹が国花の候補として挙げられたほどです。
今回挑戦するのは体験教室の中でも人気の苔玉作り。苔玉とは盆栽の1種で、日本庭園や盆栽で広く用いられる苔を愛でるインテリアです。まずはアイビーやトウガラシなど5種の植物の苗から好きなものを1つ選びます。1つずつ見比べた結果、緑と白の葉がさわやかなオリヅルランの苗で作ることに!苗の根の周りに付いた土を半分ぐらい落としたら、次に「ケト土」という保水力が高い土をしっかりと練って、その土で苗の根を球形に包みます。ここからが一番難所である苔を付ける工程です。乾燥した苔で土全体を覆いながら、黒糸で何重にも巻いて固定していきます。土が見えなくなるように苔でくまなく覆う作業は、なかなか大変でした。最後は底面を整えて、飾り紐を好きな方向に巻き付けて完成。初めての体験だったので1時間ほどかかりましたが、出来上がった苔玉を見ると思わずにんまり。久々に土や植物に触れ、自分で作った苔玉にとても愛着が湧きました。
日本でおなじみの盆栽ですが、実は起源は中国といわれ、「盆景」と呼んで親しまれています。盆景の種類は数多く、なんと流派まであるほど。日本でもよく見る、鉢の土に木や花を植えたものだけでなく、石や岩を使う「山水盆景」と言われるものもあります。
日本を代表する和菓子の老舗で甘味を味わい、和を感じられる苔玉作りを体験。最後まで必死に考えて手を動かした体験が面白く、楽しい思い出になりました。
賀 嘉琪