写真部門および絵画部門でそれぞれもっとも評価の高かった「最優秀賞」を始めとした各賞をご紹介します。地域の懐かしい歴史を振り返る「歴史・思い出賞」、若い感性が溢れる「学生優秀賞」、審査員の琴線に触れた作品「審査員賞」。その他にも、“ええはがき”のスピリットが表現された「大阪ええはがき研究会賞」など、作者の思いと地域の魅力が凝縮された75作品をご覧ください。
待ちに待った春の到来。色を明るくハイキー調に仕上げているので、まさに春うららが感じられます。色の調子とテーマの内容とが上手く合った表現になっています。温かい春の空気に浮かれだし、夙川の堤防を散策したりお花見をしたくなってしまいます。
さくらの花をぼかしたりして遠近感を作り出し、写真を引き立たせるトンネル構図を活用しながら、阪急電車をうまいタイミングで捉えきっています。完成度の高い作品です。
(有野 永霧先生)
箕面川に架かる赤い橋を渡ると賑やかな石橋商店街、ここは能勢街道ですね。この道をいつも歩かれるのでしょうか。橋の赤い欄干、商店街の赤いのぼり、ビル壁の大看板、そこを行き交う人の姿…この橋の風情を、ゆったりと自然体で眺める作者がそこに立っている、そんな感じのする絵です。
何気ない見慣れた風景も切り取り方によってはこんな素晴らしい絵になるという発見、これこそわが街の再発見ですね。構図、彩色もいいですが、何よりも、この界隈の魅力を伝えたいという気持ちを素直に表現されているところが嬉しいです。
(井上 正三先生)
いつ頃に撮影された写真でありましょうか。レトロな駅のたたずまい、電車を待つ人たちの服装を見ていると昭和のよき時代がふつふつと思い出されます。セピア調のプリント表現からも歴史時間が感じられます。
写真右下にプリントされた2016/08/21の日付は現代に引き戻されてしまいます。もし実際に撮影された日が記されていますと、さらに意味合いが深まったことでしょう。この賞のこれまでの最高作品であるといえます。
(有野 永霧先生)
千年の歴史が積層する京都の街を、ポップに、軽やかに、若者の感性で切り取った作品。鉾も路線バスもまち行く人も、みんなフラットにとらえてしまう思い切りの良さが、「ここは京都?」と感じさせてしまう魅力を生んでいます。
子どものころはよくアングルを傾けて写真を撮っていましたが、なぜか年齢を重ねるにつれなくなっていきますよね。まちに対して感じるままに、楽しい気持ちでアングルを大胆に決め、シャッターを切る若々しさ、いくつになっても忘れたくないものです。
(杉本 容子先生)
商船学校の練習帆船の海王丸です。出港のタイミングであるかどうかは判然としませんが先生と一部の生徒が手を上げて船が今まさに出かけようとしている感じに写っています。横長の帆船と一列に並んだ黄色い帽子の園児の形が似通っているので全体の構図にリズムがうまれています。
先生が子供たち以上にはしゃいでいる姿も微笑ましい。未来に向けて羽ばたいていこうとする未来志向の表現が心地よい印象を与えます。
(有野 永霧先生)
愛宕神社の一の鳥居にある400年の伝統を持つ茶店平野屋、この前に立つと、さて、今から愛宕参りの表参道に入るぞと気合のかかる場所です。非常に洗練された筆さばきと爽やかな色使いでサラリと仕上げられた素描感に感心させられます。
平野屋の茅葺の大屋根を見上げるアングルがよく、画面構成もこの上ありません。大屋根の軒の線に少し曲線の勾配を持たせたことが小気味よく、全体に安定感のある魅力あふれる作品です。
(井上 正三先生)
「夜のまちを楽しんだことがない人達に伝えたい」というメッセージが込められた作品。確かに、ほろ酔いで夜の街をそぞろ歩く楽しみは、やってみないと想像できないかもしれません。味のあるネオンの色味、まち行く人の足取りがその雰囲気を伝えています。
これまでのええはがきコンテストでも、夜のまちの魅力にチャレンジする人は少なかったように感じます。夜景撮影という技術的なハードルもさることながら、夜のまちを楽しむあまり、それを人に伝えるためにシャッターを切ることを忘れてしまいがち。二重の難しさを乗り越えた力作に一票!です。
(杉本 容子先生)
今回のコンテストは、阪急阪神ホールディングスグループの社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の一環として、阪急阪神ホールディングス(株)と共催で実施しています。