写真部門および絵画部門でそれぞれもっとも評価の高かった「最優秀賞」を始めとした各賞をご紹介します。若い感性が溢れる「学生優秀賞」、審査員の琴線に触れた作品「審査員賞」。その他にも、“ええはがき”のスピリットが表現された「大阪ええはがき研究会賞」など、作者の思いと地域の魅力が凝縮された67作品をご覧ください。
泣き相撲は、子どもが元気な声で泣けば泣くほど幸が来る、という催事です。子どもの健康と成長を祈願する日本の伝統行事。神聖な土俵に素足をつけることにより災いや悪霊を払いのけると伝えられています。この作品の良さは、構図と物語性にあります。しっかりした大人の足をトンネル構図で見せ、元気に泣く子どもを中心におき、さらにバックに家族の満足げな顔まで写し込んでおり、この三位一体のバランスの良さによって何とも言えない充実した画面作りに成功しています。外国人がこの写真を見て可哀そうなことをしているように感じるかも知れませんが、良く知ると日本の催事の深い意味に興味を魅かれるのではないでしょうか。
(有野永霧先生)
明治時代、日銀京都支店として建てられたこのレンガ建築は三条通のランドマークですが、この建築の美しさと威厳を前にするとどうしてもスケッチしたくなる衝動はよく分かります。三条通の雑踏とこの建物の容姿がいい角度で表現され、空の高さと手前の影が奥行きをうまく作っています。洋風建築を果敢に取り入れた日本の当時の知恵と技術力を海外の人に伝えたい気持ちに共感します。
(井上正三先生)
見た瞬間、「んんん?」と見返してしまう不思議な感覚。昔の作者の衝撃と、今親友と再訪している感動と、まちの未来までもが複層しているよう。作者と大阪のまちとの関わり方が変わり、大阪のまちも変わる。人とまちが時間を経て変わっていく様を、若々しい感性で画像として瞬間的に捉えている作品です。作者の未来、大阪のまちの未来に期待します。
(杉本容子先生)
中国から伝えられたという蹴鞠を楽しんでいる人達。由緒ある毬庭という庭園の広場で蹴鞠をしている。古式にのっとって演技をする人や、周りを囲んで観賞する人が俯瞰されて見事に映し出されている。アングルだけでなくシャッターチャンスも良く、登場人物の配置も完璧に近いといえましょう。すべての中心となる主役の毬も絶妙な位置で止められており、全体を引き締めており、画面の完成度を高めている。この作品を見るだけで「蹴鞠」のすべてを説明できるだけの情報量の多い写真であるといえよう。これほど堂々とした見せ方で、一つの催事を語りきる写真は稀有である。
(有野永霧先生)
この二人は多分、兄と妹でしょうか。精一杯、手を伸ばして飲み物を取ろうとする兄、それを傍で見上げながらじっと待つ妹。二人の姿は兄弟愛に包まれています。蛍池駅の雑踏が一瞬、静まり、自販機のガチャンという音が聞こえてくるような透明な空気感、そして安堵に包まれた兄と妹の笑顔が浮かんでくるようです。温かい作品に心を打たれました。
(井上正三先生)
「自慢気な様子に、クスッと笑っちゃいました」
はい、全くその通りです。見た瞬間にクスッと笑ってしまいました。作者と見る人が同じ気持ちになれる、同じようにまちを体感できる、素晴らしい作品だと思います。文句なしの大阪ええはがき研究会賞。一発で決定しました。これからも楽しい気持ちでまちを見つめ続けていただければ嬉しいです。
(杉本容子先生)
今回のコンテストは、阪急阪神ホールディングスグループの社会貢献活動「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」の一環として、阪急阪神ホールディングス(株)と共催で実施しています。