川西市郷土館の旧平賀邸に寄ってきました
8月25日に一庫ダムの見学に行った帰り道、川西市郷土館にある旧平賀邸という洋館の見学に行ってきました。見学といってもこちらはガイドも何もない自主見学です。川西市郷土館自体は1988(昭和63)年に開館したのですが、こちらの旧平賀邸はその2年後の1990(平成2)年に川西市の小戸というところから移築されてきたものだそうです。
館主の平賀義美氏という方は、日本初の工学博士で化学染料の研究家でもいらっしゃって、関西財界の振興に尽力された方だったそうです。建っていたときには洋館と並んで日本館もあったそうですが、日本館の方は取り壊されていたそうです。旧ハンター住宅もそうなのですが、日本館はどういうわけか潰されますね。価値があまり認められなかったのか、はたまた日本館だけに傷みが大きかったのか。どういう理由かはわかりませんが、この洋館と並ぶ日本館というものも見てみたかったですね。
さあ、入館・・・の前に、ここはじーねこですから、裏に回りますよ〜。裏には本邸とまったくイメージの違う木造の付属棟。どうやらここは後に増設された博士の研究棟だったようです。ちなみにここは2年前のNHK朝の連続テレビ小説「べっぴんさん」ではロケ地に採用されました。確か主人公が作った会社である「キアリス」の製品を作る工場になっていたと思います。本邸は米軍に接収されていましたね。
じーねこが近代建築を見るときは、必ず2回行くようにしています。最初は何も見ずに自分の知識と直感で観察して、家に帰って復習。そして答え合わせの2回目という具合に楽しみます。今回は1回目なので直感を頼りに眺めています。ただ下見板張りのコロニアルスタイルの多い神戸異人館が主であるじーねこにとっては、この英国の田園住宅の形式というのは馴染みが薄く、今回はあまりうまく説明が出来ないと思いますのでご容赦ください。ただこの増設された研究棟部分は板張りなのでほっとしますね(笑)。神戸異人館と違うのは板が縦張りだということです。異人館はほとんど横張りです。
さて、じーねこが好きな開口部を眺めます。増設部分と本邸の窓です。増設部分は横開きで本体部分は観音開きになっていますね。ちなみに正面の出窓は上げ下げ窓になっていました。このあたりの違いもいいですね。後に本で知ったのですが、この旧平賀邸にはトランプの4つの模様がそれぞれどこかに施されているそうですよ。お、写真にそれらしい模様がみえますね。
そしてまた正面に戻ってきました。サンルームの部分ですが、もはやここにはベランダというステータスシンボルはありませんね。それにしてもなんという複雑な屋根なんでしょう。煙突は鉄筋コンクリートですが元々は煉瓦積みだったそうです。やはり耐震基準的に煉瓦はアウトでしょう。やむを得ません。外壁も下地には防火用に瓦が貼られていたそうですが、そこも移築の際に「防水紙付メタルラス」という素材に変えられたそうです。ちなみに旧ハンター住宅も外壁下地に瓦が貼られてあって、そちらはまだ現役で頑張っています。
では、満を持して館内へ。まず玄関を抜けるとホール。ここは廊下で部屋を区切るのではなくホールから別れる広間型プランという形式ですね。お、早速開口部に違いが。ここはペディメントのような飾りではなく、ステンドグラスで部屋の違いを示していると見た!どうかな?
おお、いかにも格の高そうな部屋ですね。暖炉のマントルピースもしっかりしている。天井にも意匠が施されています。ここがどういう使われ方をしていたのかわかりませんが、大事なお部屋だったのではないでしょうか。
もう一方の部屋はこんな感じでしたが、逆光で暗くなってしまいました・・・。ただステンドグラスのあった部屋よりは小さかったので、やはり先程の部屋が一番格の高い部屋なのではないかと思います。とはいえ、こちらもいい雰囲気のお部屋で、接客用に出来る「公」の空間のように見えます。
こちらは寝室。天井の意匠と暖炉を見るとここが「私」的空間ということが一目瞭然ですね。神戸異人館との共通点が見つかるとほっとします。興味深いのは廊下部分。外から見ると意識しませんでしたが、内部から見ると開口部が欄間、横開き窓、パネルと続く神戸異人館のベランダの雰囲気がかすかに残っているように見えますが・・・。
足を踏み入れるとこんな感じです。神戸異人館のベランダにそっくりです。どうやら正体は増設部分への連結箇所のようでした。なるほど、ここは本来室内ではなかったわけですね。しかし室内と屋外の境界部分が神戸異人館のベランダ部分に似ているというのも興味深いですね。ここは次回来たときにじっくり観察してみましょう。
サンルームの部分。ここまで開放的な空間は神戸異人館にはないですね。むしろ何のための部屋だったのか知りたいくらいです。どういう使われ方をしていたのでしょう。もしかすると移築前の環境が大きく関わっているのかもしれません。ここも次に来たときまでの宿題ですね。
付属棟や建具のお話もしたかったのですが、ちょっと長くなってしまったので一旦ここで終わります。最後に反省点を2つ。後に本で知ったのですが、壁紙は何とあのイギリスの「ウィリアム・モリス」氏のものだったようです。あれだけ風見鶏の館のアート&フォトツアーで学んでいながら全く気が付かなかった自分に減点2(笑)。
ステンドグラスも日本のステンドグラス製作の草分け的存在である「小川三知」氏の作だったことに気が付きませんでした。しかし何となく心を惹かれてこのように直感的に写真を撮っていたので、ここは減点1。壁紙に関しては上のようなピンボケ写真しか残していませんでしたから恥ずかしいこと火の如しです(笑)。
という感じで、なかなか見応えのある洋館で、立ち寄ってよかったです。洋館は1棟しかないのですが、本丸である「旧平安邸」という壮大な日本館があります。こちらも素晴らしい建物でしたので、もう少し和風住宅の知識を入れてから紹介したいと思っています。とにかくこの2棟と一庫ダムを見るだけでも十分、川西まで足を運ぶ価値はあります。これからの秋の行楽シーズンぜひ川西で近代産業ハイキングを楽しんでみてください。
そして川西といえば、このイチジクですよ。フルーツキングであるじーねこがスルーする訳がありません。出来れば畑や農協の直売所にも行きたかったのですが時間がなかったので、今回は駅前のスーパーで朝採りの完熟を購入。甘みの質が全く違いました。風味が濃厚。しかも瑞々しい。デリシャスでした。しかもこのボリュームで498円。これだけでもまた川西に来ようと思いましたね。ダムに洋館にイチジク。川西最高でした。
【川西市郷土館】
所在地:兵庫県川西市下財町4-1 TEL:072(794)3354
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は午後4時まで)
休館日:月曜日(祝日に当たる場合はその翌日) 12月28日〜1月4日
入館料:一般300円 大高生200円 中小生150円
※65歳以上の方は一般の半額となります。
※障がい者及びその介護者は半額となります。
※経路はgooglemapが選んだルートで、最適ルートと異なる場合があります。