神を呪う?甲の形に似ている?実は謎多き神呪寺と甲山
神を呪う...
なんて恐ろしい名前の寺なんだ...
と、この名前を見た時思いました。
甲山の観光スポットといえば、真っ先に名前が出てくる有名なお寺「神呪寺」です。
いきなり結論を言ってしまうと、「呪」という字は「呪う」という意味ではなく、呪文と解釈します。
呪文の中に呪う要素も入ってはいますが、この場合の「呪」は言葉という大きな括りでとらえ、そのまま神の言葉という意味です。
神の言葉イコールお経、真言宗の「真言」と同じです。
よく聞く「ナントカカントカ、ソワカ~」というあれですね。つまり神様を呪っているわけではないのです。
神呪寺は、山門と本堂の真ん中を「大師道」が貫いています。
車やバス、徒歩でも大師道をそのまま上がってくると、山門の裏側に出てくることになります。
こちらが山門の正面です。大師道を通らずに上がってくるとこちらに出るようです。かなり年期が入って立派な山門。
ここからの眺めも十分気持ちいいですが、更に階段を上り本堂をめざしましょう。
神呪寺の敷地内にある神社ですが、こちらに祀られているのは女神です。
基本的に山の神は女神とされています。「うちの山の神に怒られる」なんておじさんたちが奥さんのことを言うのは、そこから来ているんですね。
この「山は女である」という事実は、甲山を含む六甲山系にも色濃く出ています。
そこで甲山の由来の話になりますが、私が子供のころから聞かされていたのは甲山の形が「甲の形に似ているから」というものでした。
まわりに聞いてもそうみたいなので、やはり一般的に知られている理由みたいです。
しかし実はもう一つ由来が存在してるのです。
4世紀という遥か昔「神功皇后が、国家の平和を願って甲や剣などを埋めたから」というもの。
誰?
ってことですが、神功皇后は神のお告げを受け、国家安定と繁栄のために戦った武勇の女性。しかも妊娠中の身で、戦いの地で出産までして。
とにかくすごい人なのです。
そして何より、関西にとても馴染みの深い「廣田神社」を創祀したお方。
阪神タイガースが毎年必勝祈願をするあの神社です。
神功皇后にお告げをした神というのが、六甲山系に祀られていた女神さま。そこで勝利の報告と国の安定守護を願って廣田神社を建てたということになります。
ですから、すぐ側にある甲山に祭祀として武具が埋められたというのも単なる伝説とは言い切れないものがあります。
ところで、この山の女神とはいったい何者なのでしょうか。
廣田神社ではアマテラスの荒魂(アラミタマ)として祀られています。荒魂というのは、神様の荒々しい面、戦闘的、祟るなどの怖い面のことと言われています。
(この辺の事情はかなりややこしいのでスルーしますが)
実はこの六甲の女神さまは、謎の神として有名なのです。古事記にも出てこず、記録がほぼ無いにも関わらず、その存在は広く長く語り継がれている奇妙な女神。
歴史から抹殺された実在の人物といういわくも伝えられています。いったいなぜなのか。どうして六甲にいるのか。
そうなると神功皇后との関わりは何なのか。今だにはっきりとしたことが何もわからないという不思議な神。
古代史が好きな人には、とても興味深い魅力的な存在なんです。
現在は弁財天とも混合されている、その名も「瀬織津姫(セオリツヒメ)」という女神。
大ヒットした映画「君の名は」の主人公の名前が、この女神の別名から取られたそうですね。
甲山を含むエリアの寺は、非常に真言宗が多いです。神呪寺の中にも弁財天がいることを見ても、弘法大師はこの女神の謎を知っていたのではないか。
なんて考えるととても楽しい。
神社仏閣が建っている場所には、必ず何か意味があるということを聞いたことがあります。
身近な観光スポットにもいろいろな伝説や謎が隠れていたりしますので、なかなか面白いですよ。
記事の内容に全然関係ない話だけど、このサツキどうやって混ざったんだか気になってしょうがない。
「神呪寺」
アクセス: 阪急電車甲陽線「甲陽園」駅下車 徒歩25分
または「夙川」駅下車 阪急バス利用
または阪神電車「阪神西宮」駅下車 阪神バス利用