歌舞伎の裏側にせまる! 逸翁美術館「役者で魅せる芝居入門」
宝塚線池田駅にある逸翁美術館では、現在「役者で魅せる芝居入門」というテーマの展示がされています。
先日、内覧会におじゃましてきましたので、特別に撮影させていただいた写真とともにご紹介します!
2か月ぶりの逸翁美術館はすっかり初夏の雰囲気
ところどころに残る昔の街並みの風情を感じながら歩いていると現れるモダンな建物。
逸翁美術館の建物はほんとにいつ見てもカッコいい!
よく見ると、建物の窓にあしらわれた装飾も木蓮柄。
美術館内にあるホールも「マグノリア(=木蓮)ホール」という名前だし、逸翁美術館のシンボルの植物なのかな?
前回おじゃましたときは、緑・黄・茶色でしたが、今は緑・黄・青。
爽やかですね~。
ちなみに、緑はお茶、黄色はお茶椀を表しているそうですよ
前回の展示(これはkawaii文化の源流!逸翁美術館「未来につなぐ和の意匠力」)の内覧会は、2か月前だもんなあ、ということは、バーチャル駅長になってもう2か月かあ...なんてしみじみしてしまいました。
ほんと時の流れは速い!
歌舞伎ってあんまり見ないけど...でも実は身近なものなんだよね
繊細な美術工芸品を見てうっとりする、という展示ではなく、美術館所蔵のお芝居にまつわる資料を見ながら歌舞伎ってどんなのだったかな、と感じるスタイル。
それぞれの展示物の説明を読み進むうちに、歌舞伎に詳しくない人でも「へ~!」と楽しむことができる展示ですよ。
歌舞伎って、実際にお芝居を見に行くような方以外の人(わたしもそうなんですが)にとっては、ちょっととっつきにくいイメージがあったりします。
ですが、歌舞伎や、あと相撲なんかもそうだと思うのですけれども、古くからある伝統芸能で、それが現代でも続いているような場合、その文化が知らない間に日常の生活の中に溶け込んでいたりするんですよね。
たとえば、大詰めとか御曹司とか、花道、黒幕、どんでん返しといった言葉は、普段の生活で当たり前に使いますが、元をたどれば歌舞伎や古いお芝居の用語。
今回の展示では、そんな遠い存在だと思っているけど、よく考えたら知ってるかも...! という歌舞伎のいろいろを感じられます。
"推し"を探す喜び...
▲昭和26年、東京の歌舞伎座で行われた十三世片岡仁左衛門襲名披露の絵看板。つい最近片岡家から逸翁美術館へ寄贈されたものだとか。
歌舞伎というと、決まった家に生まれた男の人が代々同じ名前を受け継いでいく襲名という独特のしきたりがありますよね。
ちょうど今、前の松本幸四郎さんが松本白鸚さん、前の染五郎さんが十代目の幸四郎さんを襲名され、各地でその披露公演が行われています。
▲昔のものの展示と思っているところに今年の写真が飾られているとちょっとびっくりする!
先代の幸四郎さん、今の白鸚さんといえば、わたしは「王様のレストラン」というドラマで伝説のギャルソンの役をしていたのを思い出すのですけど、そういえば歌舞伎役者さんだもんなあ...! なんてこの写真を見ながら改めて思ってしまいました。
っていうか、娘さん、松たか子さんやし、真ん中に写ってる幸四郎さん、前の染五郎さんはNHKのドラマ「妻はくノ一」で優しいお侍さんの役してたなあ、とか何とか...。
(ちょっと関係ないですが、「妻はくノ一」はスパイの奥さんとお侍の旦那さんの切ないストーリーがすごく面白いドラマで、原作は切ないけど爽快なとっても楽しい娯楽小説ですよ!)
▲歌舞伎役者さんの番付表
お相撲さんもそうですし、あと宝塚歌劇なんかもそうなのかなあ。
歌舞伎って、芝居そのものを見る楽しみもあるのでしょうけど、特定の役者さんを応援する楽しみってあるんですよね。
若いころから目をつけていた役者さんが、ちょっとずつ有名になっていく過程を楽しむ...。
そういえば、アイドルグループなんかもそうですよね。総選挙やったりして。
歌舞伎役者さんも、昔からランキング形式の本が出されていたりしていたようですよ。
やっぱり昔もマニアの人たちが、ランキングの下位にきらりと光る逸材を見つけて、育てる楽しみを見出していたりしたのかしら。
江戸時代の浮世絵には役者絵なんてジャンルがありますけど、明治に入るとやっぱり写真。
いわゆるブロマイドですね。どんなところで売られてたんだろう。
歌舞伎は独創的な舞台装置で行われる「演劇」!
今回の展示の中には、歌舞伎の舞台としての魅力がわかるものもいろいろありました。
歌舞伎って古典芸能というイメージがあるんですけど、その前に演劇なんですよね。
それも、かなり独創的な舞台設備や演出がなされたキレッキレな演劇。
舞台が回って背景が変わったり、妖怪が舞台上に急に現れたりといったおもしろい演出がいろいろある歌舞伎ですが、長谷川勘兵衛さんという大道具さんがいて、その人を中心にいろいろと驚くような仕掛けが考えだされているのですって。
ちなみに「長谷川勘兵衛」というのも代々受け継がれている名前で、今は17代目の勘兵衛さんが活躍されているそうですよ。
見たこともないような斬新な演出を見ると「どんな仕掛けになってるんだろう」と想像しますが、なんと! 江戸時代にも特撮解説ガイドブックのようなものがあったのだそうです。
着替え用の装置の中で、裏方さんが鏡を持ってたり小道具を渡してるところがおもしろい。
真っ暗だとどうしようもないので、ちゃんとろうそくがおいてありますね。
他にも、俳優さんの舞台裏を描いたものもいくつか展示されていました。
大きな鏡を前に衣装を着けている姿は、今と変わらないですね。
鏡の近くにはお化粧道具が並んでます。
歌舞伎俳優さんって、ほとんど通し稽古みたいなことってしないのですって。
自分の役の練習だけをそれぞれの俳優さんが個別にして、本番前に何回か合わせるだけなのですって。
知らなかった...。
聞いたことのあるお話の舞台ポスターいろいろ
歌舞伎には「絵看板」と呼ばれるポスターのようなものがあって、今も劇場の外に飾られているそうなのですが、今回の展示でもいくつか、有名な場面を描いた絵看板を見ることができます。
わたしが個人的に好きだったのはこちら!
道成寺は和歌山にあるお寺に伝わるお話。
初恋の人に振られた清姫がストーカーみたいになっちゃって、道成寺に逃げ込んだ元カレの安珍くんを鐘ごと焼き殺す、というかなりエキセントリックなストーリーです。
清姫は火を噴く蛇に姿を変えて安珍を呪うのですが、絵看板に描かれた清姫の赤いウロコのような模様の帯が蛇のように鐘に巻き付いて、同じくウロコ模様の着物の端がちらちらと燃えているのが美しい!
あと、以前NHKの大河ドラマでやっていた「風林火山」が好きだったので、そのドラマの主役・山本勘助が出てくる「本朝廿四孝」の絵看板を見つけてちょっとうれしくなってみたり。
他にも有名な歌舞伎の名場面を描いた錦絵などがありましたよ。
▲石川五右衛門が南禅寺の三門で「絶景かな!」をやってるところ
ちょっとしたお楽しみもあるよ
美しいものを見て楽しむというより、資料を見て感じる展示が比較的多い今回の展覧会ですが、展示の最後のほうには気楽に楽しめるものもいくつかありました。
これは、見るだけでなく実際手にして遊べるんですよ。
▲箱が歌舞伎の定式幕柄。学芸員さん、マメだ...!
あとぜひ見ていただきたいのがこちら。
今展示されているのは本朝廿四孝のものですが、後期は国性爺合戦のものに変わるようですよ。
他にも、会期中にお休みをはさんで展示の入れ替えがありますので、前期と後期、両方行ってみるとけっこう歌舞伎に詳しくなれるかも...。
歌舞伎は全然わからないから不安、という方は、6月9日(土)の午後2時から学芸員さんの解説もありますので、そこを狙っていくのもいいかもですよ。
歌舞伎ワールドⅠ『役者で魅せる芝居入門』
前期:2018年5月19日(土)~6月17日(日)
後期:2018年6月23日(土)~7月22日(日)
逸翁美術館
●所在地:池田市栄元町12-27
●電話:072-751-865
●休館日:月曜日(但し7月16日は開館、7月17日が休館)
●開館時間:10時~17時(入館は16時半まで)
●観覧料:一般700円 大・高生500円 中学生以下無料
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