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阪急バリアフリープロジェクト Vol.4

新型車両のバリアフリー設備

2021.12

思いやりを車内のすみずみに。

ガイドラインを遵守しつつ、それ以上の整備も。

鉄道業界では、法律に基づくバリアフリー基準(公共交通移動等円滑化基準)や、その基準を基に、整備方針を示した「バリアフリー整備ガイドライン」により、さまざまなバリアフリー設備の整備に対応しております。また、昨今、バリアフリー化・ユニバーサル社会の早期実現に向けて、基準やガイドラインの改訂も頻繁になり、鉄道各社はより高度なバリアフリー化が求められるようになりました。

このガイドラインには、バリアフリー基準に基づいた絶対に守るべき義務基準、この程度は整備してほしいという標準的な基準、さらに整備されていることが望ましい基準、といった3段階の基準が記されており、当社としても義務基準はもちろん、標準的な基準も利用状況に沿って準拠しながら、車両の新造や大規模リニューアルに合わせて、さらなるバリアフリー設備の整備に取り組んでいます。

以下、最新の車両である1000系・1300系を例にとって、阪急電車のバリアフリー設備のご説明を致します。

新型車両1000系・1300系でのバリアフリー設備

車内案内表示器
32インチハーフサイズの大型液晶ディスプレイを採用し、視認性を向上。出入口上部に1車両あたり3ヶ所設置し、種別・行先、停車駅案内のほか、駅到着時にホームのバリアフリー設備の案内等を行います。

扉開閉予告装置
出入口上部に設置し、扉の開閉を光の点滅および「ピンポン♪」という音でお知らせします。

誘導鈴
扉が開いている状態の時は「ポーン♪」という断続音により、開いている扉の位置をお知らせします。

点字による乗車車両の位置表示
出入口の扉に点字パネルを取り付け、乗車車両およびドアの位置を表示しています。

カラーユニバーサルデザイン路線図
色覚の多様性に対応した、誰もが見やすい路線図にしています。NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構から承認を得ています。

全車両に車椅子スペース
バリアフリー基準での設置義務は1編成に2ヶ所ですが、新型車両では各車両(出入口付近)に1ヶ所設置。また、車椅子の移動が楽に行えるようスペースを拡大しています。

バリアフリー整備と阪急らしい車内空間の両立を。

阪急電車といえば、小豆色のようなマルーンカラーの車体、木目調の内装、緑色の座席生地が特徴です。落ち着きのある車内空間を提供できるよう、このようなデザインを守り続けてきました。

一方で、バリアフリー化にはわかりやすい色使いを求められる場合があります。ご乗車される皆様が気持ちよく乗れる空間の維持と、バリアを感じている方の不便の解消、この両方を知恵や工夫でクリアしていくことが重要だと当社は考えています。

例えば優先座席の見分け方も、座席や内装を目立った配色にすれば簡単ですが、当社は試行錯誤した結果、座席を車体色とマッチしたマゼンタ色にして、内装にはステッカーを貼ったり、カーテンにイラストを追加したりすることで、識別のしやすさと阪急らしいデザインの維持を両立させています。

昨今、バリアフリー設備に対する要求は以前に増して高まっています。これまでも高齢者や障がい者等をはじめとした多様な方々に配慮した車両づくりを進めてきましたが、現状に満足することなく、さらに多くのお客様に評価していただける車両を目指し、レベルアップを図っていきたいと考えています。

担当者インタビュー

すべてのお客様にとって、心地よい車内空間でありたい。

阪急電鉄(株)
技術部(車両計画担当)

小原 嘉仁(左)
藤田 洋一(右)

新しい設計図からつくる新型車両でバリアフリー設備を実現していくことは、実はそう難しいことではありません。私たちが苦労しているのは、その設備を従来の車両においても適合していくことで、リニューアル工事などの大規模な改造を行う際には、車体構造上、スペース等の限られた条件の中で、バリアフリーに対応した設備をいかにして設置するか、工夫しながら設計しています。

例えば車椅子スペースは新型車両だと全車両に設置することを標準としていますが、従来の車両でも、一部座席配置を変更するなどの改造により、車椅子スペースを全車両に設置することで、バリアフリー化の推進に努めています。

とはいえ新型車両でのバリアフリー化でもネックとなるポイントはあります。当社には落ち着きのある車内空間を提供するためのデザイン面での伝統もあります。この阪急らしいデザインをいかに崩さずにバリアフリー化を実現していくかに工夫が必要です。

必要なバリアフリーの設備や機能を余すところなく追求することを最優先に、しかしながら車内のデザインにマッチするものを目指したのが新型車両1000系・1300系です。すべてのお客様にとって快適で、使いやすい車両となるよう、バリアフリーに関する考え方については、今後の車両設計にも活かしたいと考えています。

また、当社は、健常者の視点では気づけない課題が多々あると考え、障がいのある方の視点を取り入れる取組を行っています。障がい者団体の方々を招き、当社社員が付き添って電車にご乗車いただき、アドバイスを伺い、意見交換をするなど、利用者の生の声を聞いて少しでも車両の整備に反映できるよう努めています。

今後も、鉄道車両という構造上の制約の中で、高齢者や障がい者等をはじめとした多様な方々に配慮したバリアフリー設備の研究を進めるとともに、すべてのお客様にとって、心地のよい車内空間となるよう、デザインや設備の改良を図ってまいります。